更新:2018/03/13

上伊那でも同じことを・・・

 「リニア中央新幹線の活用を考える上伊那地域連絡会」と県上伊那地域振興局の主催で、リニアをテーマにしたシンポジウムが3月11日にありました(『長野日報』3月12日)。

 『長野日報』によれば、慶応大学の岸博幸教授は講演で:

地方の新幹線駅のほとんどが通過点になっている現状に触れ、「新幹線が通って地域が良くなることはない」と断言。企業誘致や観光誘客など、単なる「来てくれ、来てくれ」の戦略では失敗に終わるとした。(『長野日報』)

と、話したそうです。『信濃毎日』も記事にしていましたが、この部分はありません。『長野日報』は以下のように続けています。

「選ばれる地域」にしていくには、「地域でイノベーションを次々と創り出すことが大切」と強調。「産業だけでなく、あらゆる分野で、新しい組み合わせ(イノベーション)による新たな価値を地域全体で生み出していき、伊那谷を世に知らせてほしい」と述べ、「私の別荘がある原村もそうだが、伊那谷にはいいパーツが豊富にある。それらを組み合わせて魅力を高めていって」とエールを送った。(『長野日報』)

 『信濃毎日』は次のように書いています。

・・・開通までの取り組みが重要とし「企業や地方自治体がイノベーションをつくり出す」必要性を説いた。イノベーションとは、既存のものを組み合わせて付加価値を生み出すこととし、アイドルグループが握手会の参加券を付けてCDの売上げを伸ばした例を挙げた。地域としては「地元の魅力をどう再定義し、地道に発信できるかが大事だ」と指摘した。(『信濃毎日』3月12日)

 岸博幸教授は、2013年の12月14日に飯田でも同じようなイベント「リニア未来シンポジウム(第2回)」で講演をしていました。同じようなことを話していました。

 飯田より、上伊那の方が4年遅れで同じことをやっている。そして、多分、先に立つ人たちは、岸教授のお話をあまり真剣に聞いていないということも同じだろうと思います。

 伊那市の講演は聞いていないので、大したことは言えないですが、飯田での講演では、「不便というのは人がこない理由にはならない。本当に来たい人は不便に関係なく必ず来てくれる。」などの発言から、リニアに期待してはダメという内容だったと思います。飯田での講演の様子は⇒ 「不便というのは人がこない理由にはならない ― リニア未来シンポジウム、第2回 ―」。

 飯田市内では、リニア関連で、隈研吾さん(2017年1月19日、飯田市中央公民館、主催:飯田市)、陣内秀信さん(2017年5月20日、長野県飯田合同庁舎、主催:南信州広域連合)の講演会がありました。お二人とも、ヨーロッパをモデルとして街づくりや地域の活性化について話されたのですが、リニアについて積極的な意味を指摘していたとは思えません。

 同じ11日、飯田の南信州地域振興局(長野県合同庁舎)では、長野県飯田建設事務所の主催で福和伸夫さんによる耐震講演会、「転ばぬ先の杖・耐震化!」がありました。福和さんは講演に先立って合同庁舎内外の地震対策を観察したようです。合庁の内部について、家具の転倒防止ほかの対策が全くしてない状況を厳しく指摘。主催者に、つまり県のお役人さんに、国の借金の額、応急住宅の供給可能数など質問しましたが、どちらも正確に回答できませんでした。つまり、南海トラフ地震とか火山の大規模噴火など大規模災害への対策はお役人たちはきちんと考えていないということです。「リニアを見据えた」さまざまの構想も同じことだと思います。いろいろなイベントはやるけれど、形だけで意味がない。あてにならない。ならばどうする・・・。


2017年5月20日 南信州広域連合主催の景観講演会「イタリアにおける地域の新しい試み」。講師は法政大の陣内秀信教授。県飯田合同庁舎301号会議室で13時30分~15時まで。入場無料。/スローを連呼しながら、「景観」が意味するところを具体的にかつ分かりやすく説明していました。イタリアの地域づくりの試みの中で、先端技術産業や高速交通機関が役立ったという話や、新しいものを建設したという話は出てきませんでした。イタリアでは、町の外に広がる田園地域も含めた全部の領域をテッリトーリオと呼ぶそうです。町は周辺の田園地帯、農業地域、漁業に支えられているという当たり前を再認識したという話。何でもないところに目を向けた。文化庁は生業が行われている地域を「文化的景観」といっています。「ありふれた普通」が実は「ただならぬ普通」。陣内さんも「文化的景観」という言葉も使いました。明らかに共通するところあります。そういうものを大切にしながら活用すべきだというのが結論。つまり「景観」はつくるものではなく守って活かすもの。飯田市歴史研究所の飯田アカデミアの、第74講座(2015年6月)、第78講座(2016年10月)も「文化的景観」をテーマにしていました。飯田歴史研究所の「わが町の建築史ゼミ」の方たちは「座光寺地区の農村原風景継承地域」を発見しています。/『南信州』5月25日、2面に記事。結びの「『南信州には宝物がたくさんある。再発見し、最大限に活かす方向を議論し、リニア開通時に世界から喜ばれる地域にしてほしい』と期待を込めた」という部分、そんなこと言ってたかな?

[ 背景の写真は、中央アルプス。カールに積もった雪の表面に雪崩の痕のようなものが見えます。]