更新:2021/06/27
カーブだらけの実験線で超電導方式を研究したドイツ
上海で走っているリニアモーターカーはドイツが開発しました。常電導です。ドイツでは、シーメンス社などが1970年代に超電導磁石を用いた磁気浮上式鉄道の開発をしていました。写真のようなテストコースで2種類の車体を走らせています。
半径140mの環状のテストコース。つまり「カーブ」だけしかない。走行試験の動画。
国鉄の東京国分寺の約500mの直線のテストコースに比べて、大きな規模です。このコースで、地上一次式(長固定子)と車上一次式(短固定子)と呼ばれる2つの方式の車体の実験をしていました。
その結果、超電導技術を採用せずに、クラウス・マッハイ社など常電導方式のトランスラピッドの開発グループに合流しました。その理由は:
常電導方式が選ばれた理由は、超電導磁石を用いたリニアモーターカーの研究で明らかになった、経済的・技術的デメリットが原因であった。
最近の超電導技術は進歩してきているが、以下のような欠点が解決されていない。
- 渦電流効果によるエネルギー消費が大きい
- 特に低速度で顕著にみられるブレーキ作用で運転条件が不利となる
- 浮上、着地システムや超電導冷却システムのような余分の車上ユニットが必要である
- すべての考えられる運転条件の下で、良好な乗り心地が得られる技術問題が解決されていない
- 乗客および持物に対する高磁場の影響が不明である
当時の結論は1987年に再度見直され、1977年の選択は間違っていなかったことが確認された。
("大塚邦夫著『西独トランスラピッドMaglev―世界のリニアモーターカー』(公共投資ジャーナル社、1989年)、p37" より)
日本でも日本航空が成田空港へのアクセスのために磁気浮上方式の開発をしましたが、超電導と常電導を比較して常電導を選んでいます。その理由は(参考):
ヘリウムの冷却,液化にかなり大きなパワーを必要とするし,また高価なヘリウムの散逸を防ぐことに技術的困難が予想される.その他強力な磁場が人体に及ぼす影響とか,高速における動安定など今後解明せねばならぬ多くの点があると思われる.
この方式の利点の一つは,浮上パワーが他の方式に比較して小さい点にある.すなわち1トンの揚力を得るに1~3kW程度しか要しない.またレールとの間隔がきわめてタイトに保持できるので,リニア・インダクション・モーターと組み合わせれば,モーターのエアギャップの維持が容易である.
この方式の魅力はなんといっても大部分がすでに解明され実用化されている技術の応用であり,それゆえに安価でかつ実用化がきわめて容易であることである.
日本航空の常電導方式は高速ではないですが名古屋でリニモとして営業運転をしています。
常電導が選ばれた理由はともかくとして、ドイツの超電導のテストコースが最初から円形だったことは、結局、超電導リニアがほぼ直線しか走れないことを予見するものだったのかも知れません。国鉄の技術者たちは、国分寺で実験しているあいだに、超電導方式の欠点に、なぜ気が付かなかったのでしょうか。