更新:2024/04/30

ガイドウェイの問題点(SNSから)

なんともダサい無才な

 フェイスブックの投稿(4月28日 22時44分)に次のようなコメントがついています。いわれてみればその通り。

(A)2枚目の写真、ガイドウェイの上端が乗降の邪魔になるのを、初認識しました。なんともダサい無才な設計。
上端をどうやって動かすんだろうか? 持ち上げて、ズラスしかないですよね。プラットホームとガイドウェイとの隙間に、そのメカを嵌め込むのか。
乗降の際に、さらに余計な時間が掛かりますね。30秒ぐらいか?
(A)たしかにそうなってる! 外した上端はどこに? 実験線は、人力で嵌め外し?
この資料のP. 24から。
https://www.mlit.go.jp/common/000112485.pdf
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(画像は元ファイルから=引用者。コメントが問題にしているのは矢印ではさんだ部分。横方向を支える車輪が触れる部分。乗降装置の部分で不連続になる。)
(B)見直し見ましたが、ガイドウェイの上端の上に歩く床がありますね。
ガイドウェイの上に床とそれを支える部材が迫り出していくのだと思います。
私は、抽選に当たらず一度も乗った事がないのですが。
(A)ドア横の部分がホーム側にずれてドア部分が横にずれるのかもいずれにても故障要因が一つ増えました
(B)東京では、多くの駅でホームドアが動いていますが故障したという報道はあまりありませんね。 飛行場のボーディングブリッジもそうです。
日本にはそれぐらいの技術はあるのでは?

 リニア新幹線の車体の高さは3.28mです。ガイドウェイの高さを約1.3mとすれば、ガイドウェイの上の端から車体の一番高い部分までの高さは1.98mですが、車内の床から天井までの高さは少なくとも2.2mはいるはずですね(*)。車体の高さ3.28mから2.2mを引くと1.08m。屋根の厚さを考えていないんですが、確かに、どう考えても、ガイドウェイの高さが車体の床の高さより高くなってしまいます。

* 『トラベルWatch』2020年10月21日 "JR東海、リニアL0系改良型試験車の内部を公開。新シートと高速走行時の騒音低減で快適さがアップ!" 掲載の写真から、室内の実際の幅を2.7mと仮定して推定

 お客さんが待っている駅のホームといっていいのか、普通の鉄道でホームにあたる部分の高さと車体の床の高さは同じにしなくてはならないはず。

 山梨実験線で体験乗車で乗降りをする部分の写真です。

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 写真で黒い矢印ではさんだ部分は車輪走行時に横方向を支える車輪が触れる部分です。ここはガイドウェイの上端でコンクリートです。シャッターのようなもので穴がふさいである乗降装置のところだけ切り欠きができています。切り欠きの部分には別の部品がついています。たぶん、乗降装置を伸ばすときは赤い矢印の向きに倒れて、乗降装置の床の下になるのだろうと思います。まあ、それは、どうでもよいことなんですが…

 特殊な乗降装置とか磁気シールドが必要なのは、超電導磁石を使っているからです。超電導磁石の強力な磁力が人体に影響があるとJR東海自身でさえ認めているからです。

もっと大きな問題は分岐装置

 ガイドウェイの高さが車体の高さの半分近くになるという点についてはもっと深刻な問題があります。交通機関として、鉄道と比較する時に、致命的な問題です。簡単にいえば、となりの軌道に列車を移動させるのにどうするのという問題。

 鉄道では、軌道と車体が重なる部分は、車輪のフランジ(車輪の内側外周から飛び出した部分)の約4㎝×約4㎝の部分だけです。だから、レールに約4㎝幅の隙間をつくれば、列車を隣の線路に移すことができます。

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("生き残るのは鉄道" より)

 超電導でも常電導でも浮上式鉄道ではガイドウェイの大きさが車体の大きさに比べてかなり大きく、車体と重なる部分が大きくなることは昔から指摘されてきたことです(関連ページ)。

(磁気浮上式鉄道では)数組の車両を、あるいは数本の線路を用いて運転するということになると、たちまち車両をある線路から他の線路に移すという問題が生じるのである。このために必要な分岐装置がきわめて複雑で高価であることを思えば、磁気浮上方式が高速鉄道に取って変ることが決してないだろうということを理解する一助となろう。(マレー・ヒューズ著/菅健彦訳『レール300 世界の高速列車大競争』山海堂、1991年[原著は1987年]、100)

 マレー・ヒューズ氏の指摘にさらに付け加えると、動作がトロイという点です。

「車輪の発明」と「車輪の再発明」

 そもそも、「車輪」というのは偉大な発明で、中でも、長距離をエネルギー消費を抑えて効率よくという点でもっとも優れているのは、固い鉄のレールの上を硬い鉄の車輪で走るという方式だと思います。この頃は身の回りに車輪のついた道具はたくさんあります。スーパーのショッピングカートは運ぶのに楽だから使うんじゃないでしょうか。重い列車を持ち上げて走らせようというアイデアには相当の無理があることは、小学生でも思い当たることだと思いませんか? もちろん鉄道の専門家だって「おかしい」といっている(*)。これが浮上式鉄道の基本的な問題点です。ガイドウェイの採用による欠点は車輪を使わずに車体を持ち上げようとする「工夫=技術開発」の結果です。つまり、「車輪の再発明」じゃないかと。常電導も超電導も最初の発案者は鉄道技術者ではありません。鉄車輪とレールという組み合わせの利点を十分理解していなかった可能性はあると思います。

* Ralf Roman Rossberg 著、須田忠治 訳『磁気浮上式鉄道の時代が来る?―世界の超電導・常電導・空気浮上技術』(電気車研究会、1990年、p25)によれば「ドイツ連邦鉄道の機関紙は車輪-レール方式の擁立者の立場をとりつづけ『……この施設はお遊びとしては面白いだろうが、しかしながら理論に基づいた学問的な電子力学の応用事例に過ぎず。それ以上の意味はないだろう。その主たる誤りは現実面に存在する。つまり、車両を線路から持ち上げるために必要とする力はかなり大きく、少なくとも線路上にある車両を駆動する際の摩擦抵抗に打ち勝つために必要な力より大きい。その上に更に力を必要とするので、当然のことながらコストは高いものとなる。……』」と指摘。これに対して、浮上式鉄道を開発する側は「この新しいシステムは多くの利点を有しており、避けることのできない物理的なコスト増は認めるとしても、全体的には、短期間にそれを償うことができるとの結論に達している」と答えていました。この本の立場は必ずしも浮上式鉄道を否定する立場ではないように思いますが、「物理的なコスト増は認める」というのが浮上式鉄道を開発する側も分かっていたことは明らかです。小学生でも容易に予想できるはなしです。ここでいう「浮上式鉄道」は常電導方式で、超電導方式ではありません。超電導方式が常電導方式より「ちょっとね」なことはここで説明しました。

 蛇足です。フェイスブックのBさんの最後のコメント:

東京では、多くの駅でホームドアが動いていますが故障したという報道はあまりありませんね。
飛行場のボーディングブリッジもそうです。
日本にはそれぐらいの技術はあるのでは?

 「ない機能は故障しない」という原則もあります。それに、超電導磁石を使わなければ普通の普及しているホームドアを使うこともできるし、トランスラピッド(上海磁気浮上鉄道)のようになくても問題はない(必須ではないという意味)です。「日本にはそれぐらいの技術はあるのでは?」という考え方は甘すぎると思いますね。

コトバの問題

「浮上させる無理」を隠す「リニア」という呼び方

 ついでにいえば、「リニアモータカー」とか「リニア」っていってますが、アメリカやたぶん日本と中国以外の国々では、マグレブ、マグはマグネット(magnetic)のマグで、レブはレビテーション(levitation、浮上)の略で、2つをつないで「マグレブ(Maglev)」と呼んでいます。実は、中国も「磁浮」なので「マグレブ」と同じですね。リニアモータカーは、日本ではもう30年以上前から地下鉄として使われていて、現在7路線あります。鉄のレールと鉄の車輪を使っています。リニアの特徴は「浮上させる」という点ですから、「リニアモーターカー」という呼び方は、普通に使われちゃっているんですが、「浮上させる」という無理からおきる問題点が分かりづらくなっていることはないでしょうかと思いますね。

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[写真は阿智村園原の恵那山トンネルの残土捨て場に建てられた石碑の碑文]

 上の写真の碑文は、中央道の恵那山トンネルの掘削残土について「掘削土の土捨て場として…捨土(6行目)の投入を行い」と書いています。

 リニアをめぐっては、トンネル残土について、JR東海は「トンネル発生土」という言葉を使い、沿線自治体も基本的に「発生土」を使っています。しかし、住民側では、トンネル残土とか廃土とか捨土という言葉が使われてきたし、このごろは新聞も「残土」を使っています。社会が必要とする土砂の量とトンネル残土の発生量がマッチする可能性は基本的にないはずですから、JR東海が建設資材として自社用地で保管して、時間をかけて販売するなら「発生土」かも知れませんが、ともかく早く片付けたいので長野県に捨て場を探してねとお願いしている事実があるので、「残土」とか「廃土」とか「捨土」というコトバが正しいといわざるを得ません。

「要対策土」も「有害残土」または「有毒残土」

 最近、問題になっている「要対策土」なんですが、対策が必要なのはヒ素などの毒物を含んでいて水に溶けだしたりすると周辺を汚染するからです。つまり「害」がある。で、迷惑を受ける住民としては、要対策土は「有害残土」と呼んだ方がいいんじゃないかと思います。

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