更新:2024/07/19
リニアのレールの継ぎ目
「昔は」といっても、田舎では車中心で、鉄道にあまり乗らなくなったので、ということになちゃうのかなとは思いますが、昔は、レールの継ぎ目でガッタンゴットンと音がするのが鉄道では当たり前でした。って、飯田線なんかは今でも、昔より軽やかな音にはなってるんですが、レールの継ぎ目で音はしてますね。
飯田線でも、時又駅と天竜峡駅の間に、ガッタンゴットンといわない区間があって、この区間では25m毎に継ぎ目がある従来のレールではなくて、継ぎ目のないロングレールが使われています。
わたしが、ロングレールという名前を初めて聞いたのは、たぶん、1964年に東海道新幹線が開業したころだったと思います。高速で走行するための工夫の一つなんだといわれていたと思います。「レールをできるだけ長くすること。これにより継ぎ目自体を減らし、音や振動の発生源を少なくした」(*)と説明しているページがあります。
* 「乗りものニュース」2018年7月28日 "列車の「ガタンゴトン」、なぜあまり聞けなくなった? 鍵は「ロング」と「斜め」"
超電導リニアについては、レールの継ぎ目みたいな問題は関係ないと思っている人が多いんじゃないかと思います。レールの上を車輪が転がることがないんですから。
しかし、よくよくみると、超伝導リニアでレールにあたる部分はガイドウェイの側壁部分なんですが、車体を浮かせて支えるための「浮上案内コイル」というものが、ずーっと並んでいるわけです。12.6mあたりに28個のコイルが並んでいます。この上を、鉄道でいったら車輪にあたる超電導磁石が「転がって」いくわけです。だから、超電導リニアでもガッタンゴトンはあるんじゃないかと思いませんか?
山梨実験線のリニアの軌道(ガイドウェイ)。右が名古屋方面。
上の写真の部分拡大。2024年1月撮影 = 表面のデザインは変化してますが、ガイドウェイの高さは変わっていないので10年前と12.6mに28個の浮上案内コイルが並んでいることは同じです。
さすがにガッタンゴットンとまではいかないですが、規則正しく並んだ「浮上案内コイル」の上を超電導磁石は走るので、走る速度に応じて、細かい振動を受けているのだそうです。時速500キロのときには1秒間に309回の振動を受けているそうです。速度が変われば振動数も変わるのですが、車体に共鳴(共振)する部分があるとその部分も振動するのだそうです。
* 「軽視されてきた問題は,力の絶対値は小さいが,繰り返し発生する振動力であった.この振動力は,一定の間隔で並んだ地上コイルが原因で,言うなれば超電導磁石が規則正しい凸凹道の上を走っているようなものである.… このため,この超電導磁石もしくは車両のどこかに,この309Hz以下の固有振動数があれば,加速中に大なり小なり共振現象を起すことになる.」(「低温工学」、中島洋、 "21世紀へ伝えたい超伝導応房技術7:超電導リニア開発裏話")。宮崎実験線時代にクエンチがしばしば起きた原因に関連した部分ですが、「規則正しい凸凹道の上を走っているようなもの」という仕組みは現在も同じです。
体験乗車の動画は、車内の様子が写ってるのがほとんどですが、車内でも細かい振動があることがわかるものが中にはあります。
JR東海は2020年12月4日に、小牧市の研究施設内に設置された「リニア走行試験装置」を報道陣に公開しました。『信濃毎日新聞』(5日33面)は「この日は実験線の直線区間を走る状況が再現され、約4センチ浮上した車両が細かく揺れ動いていた。」と、『乗りものニュース』(*)は「様々に細かく揺れる姿が見られました。実車体の振動を元に、リアルタイムに計算。揺れを再現している」と書いていました。
* "JR東海「走らぬ超電導リニア」を導入 それが効率的なワケ L0系&MLX01実物使用" の2ページ目
関連ページ:"「リニア走行試験装置」の公開"
鉄道のレールと同じような問題を超電導リニアも引きずっているという点では、もうひとつ。
鉄道車両は2本のレールの上を車輪で走りますが、実は、簡単だけれど、なかなか面白い仕組みで走っています。こういう話は動画で見た方が分かりやすいのでこのページでいくつかの動画へのリンクを紹介しています。
8年も前の話じゃないかと思う人もいるでしょう。しかし、超電導リニアの走る仕組みの基本的な部分は今も同じです。
鉄道の場合は簡単にいえば、「車軸の両側に車輪がついたもの」がレールの間を左右に振れながらレールに沿って走っているわけです。よくできた仕組みなんですが、高速になればなるほど列車が激しく揺れるという問題が出てきて、新幹線の開発では、この揺れを抑えることが大きな課題だったようです。
Youtube "振動の世界 東京文映製作" の 15分10秒から。
磁石をいじってみれば分かることですが、同じ極同士を向かい合わせたとき、2つの磁石の間の距離が近いほど、近づけるのに力がいります。ばねと同じです。JR東海は、超電導リニアは「磁気ばね」で支えられているんだと説明しています。ふつうに考えて見てください。ばねで支えた物って揺れますよね(参考)。つまり、ガイドウェイの中で列車は左右と上下に振動しながら走っているかもしれない。じつは、揺れの問題に関しては、超電導リニアは基本的に鉄道と同じような問題点を引きずってきているのではないか。
JR東海の「リニア鉄道館」の展示説明(参考)。中心に戻そうとする努力は認めるけれど、ぴったり一回で中心にもどるわけじゃない。左右に揺れながらだんだん戻る。
以下のファイルなど読めばもっと分かるんじゃないかと、これから読んで見ようかと思っています。わたしの読解力ではどうかなという気もしますが。公益財団法人鉄道総合技術研究所 > "超電導リニア車両の運動を 模型装置で検証する"。日本機械学会論文集(C 編)、79 巻 799 号 (2013-3)、"磁気浮上式鉄道車両運動評価用試験装置の実験的基礎研究*"
さてどん尻に控えしは
高速走行のための、超伝導磁石を用いた磁気浮上方式なんですが、超高速走行では問題を起こす原因となるような、鉄道が持っている、そういう特徴をそのまま引きずっているんじゃないだろうかと。
超電導リニアの元祖のアメリカや、ドイツが研究をしてみた結果、開発はしなかったという理由のひとつだったのではないか? 1970~1976年ごろのことですが、基礎的な研究の段階で、解決の方法が見つからないだろう欠点があると気付いたアメリカやドイツなどの技術者たちのセンスが良かったのかもしれません? それから何年たってるんでしょうか?
環境への悪い影響がいろいろあるんですが、基本的な走行技術についてのこういう疑問はいつまでも残る問題だと思います。まあ、もうこの辺で、リニアは中止した方が良いと思いますね。
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