更新:2019/01/17

リニア、絶体絶命。残土、処分確定は1.4パーセント。

 1月15日、飯田市役所で、JR東海、長野県、リニア関連市町村の首長によるリニア建設に関して非公開の懇談会がありました。この種の会合は、豊丘村小園で残土処分候補地が住民の反発でつぶされた直後から数えて5回目。

 懇談内容は非公開なので、報道機関は会合のあと、個別に出席者やJR東海、長野県などに取材して報道しています。

 『中日』16日によれば、JR東海の宇野護副社長は、大鹿村内で本坑の先進坑の掘削開始は今年(2019年)の秋ごろと述べたそうです。これは2017年7月に掘削を開始した小渋川斜坑の話。2018年3月の社長会見では2018年度中といっていたので、トンネル工事自体が遅れ始めていることになります。斜坑の掘削の工事期間は昨年3月の予想より約1.23倍余計にかかっています。工区ごとの工期をどれほどと考えているのか不明ですが、金子社長の最近の発言の端々からは、JR東海は相当に焦っているという印象を受けます。大鹿村内で残土がぼつぼつ満杯状態に近くなっているとしても、残土の行く先がないから、掘削が遅れているということはまだないはずです。

 残土の置き場については、『信毎』16日によれば、JR東海は現時点で確定しているのは、荒川荘跡地(約3万立米)とろくべん館前(約0.5万立米)と大鹿村総合グランドの嵩上げ工事(約10万立米)だけと説明したそうです。当サイトで確認した範囲では、ろくべん館前は工事は完了して、大鹿総合グランドに残土の搬入が始まったところです。荒川荘跡は建物撤去、立木の伐採などが済んだ状況。長野県全体で出てくる残土970万立米のうち約1.4パーセントが解決できたに過ぎない状況です。現在20か所の候補地について地権者などと「調整」を進めていると説明したようです。16日の大鹿の説明会でJR東海の古谷長野県担当部長は20か所について具体的な場所は言えないと質問に答えています。おそらくこれまで「調整」を続けている場所がほとんどのはずですが、いずれの場所も安全性の点ではどこも不適格です。

 飯田市の牧野市長は『信毎』に対して「(処分地の)造成計画について、新たな着想の必要性を感じる」と述べています。ご自身に、具体的な着想があってのことなのかどうなのか。

 『中日』によれば、複数の市町村長が「住民の理解は十分とはいえず、引き続き安全性について説明してほしい」との懸念の声があったそうです。言葉通り解釈すれば、「住民に安全と思わせるような説明しかたの工夫が必要だ」。半の沢とアカナギ下の残土置き場について、専門家による第三者検討委員会を、長野県がJR東海に金を出してもらって、設置するようなことは工夫があるとは言えませんね。また、自治体では、土石災害の心配から発している住民の反発を抑えることができない、説得してゴマカスだけの力量がないので、長野県やJR頼みという実態もあらわしていると思います。

 『南信州』の記事も残土に関することだけを書いています。

 もはや残土で埋め尽くされそうな大鹿村の柳島村長は「観光に支障があるという声がずっとある。村に人を呼ぶような営業面での協力をお願いしたい」(『中日』16日)と語ったそうです。ちょっと荒れた16日の大鹿村の説明会での住民の発言や、そのほかの機会に旅館の方に聞いたところでは、「声」ではなくて「支障」は事実です。村には「事実」を把握しようとする意志がないようです。

大鹿に行こう

 この件についてひとこと:たしかに工事車両の通行はやや増えていますが、小渋線の通行については、まだまだ、非常に危険という状況ではありません。リニア計画を推進しているJR東海のリニア推進部の社員たちは見かけによらず非常識で強引ですが、現場の工事車両の運転手は慎重です。またもともとの地元業者のダンプカーも慎重です。また道路改良で道も良くなってきています。まだまだ「美しい」場所ですから、またリニア計画の現場も見れますから、是非大鹿村を泊りがけで訪れてください。また、リニア工事の「ムリ・ムダ」を確かめてください。観光で大鹿を訪れる人が多くなれば、リニア工事用車両のほうが道をゆずらざるを得なくなるはずです。

 リニア計画の認可前、当時の石原伸晃環境大臣は「掘削によって発生する土砂は莫大で、最終処分や仮置き場も決まっていない。ここがポイントだ」(『日経』2014年6月3日)と言っています。リニアは全線の86パーセントがトンネルか地下。当初から残土処分が困難と言われてきたのに、JR東海は工事をしながら確保すれば間に合うと言ってきました。国も、長野県も、関係市町村も、無批判にその説明を受け入れてきました。絵にかいたような失敗と言えるでしょう。

 最近の度重なる自然災害で住民は残土置き場の問題への関心は高まりつつあります。数年のうちには残土問題でリニア計画はとん挫すると思いますが、いやすでにとん挫しかけていると思います。工事が進めば進むだけ被害は大きくなるので、早期にリニア計画が中止になるよう反対を続けたいと思います。

参考:残土置き場の現状 2019年1月18日現在