更新:2021/03/27
「掘って見ないと分からない」には「できない」という場合もある
リニア駅のできる飯田市上郷北条地区の住民と飯田市長の2回目の意見交換会があった3月24日、大鹿村では、第19回大鹿村リニア連絡協議会がありました。その記事が3月26日の新聞にのりました。
- 『中日』12面 "大鹿村内の掘削工事 JRが進捗状況説明 連絡協議会(web版)"
- 『南信州』1面 "計画4カ所で掘削進む 大鹿リニア連絡協 県道拡幅完了は8月末予定(web版)"
- 『信毎』31面 "残土搬出路の県道松川インター大鹿線 拡幅改良工事 8月完了予定
記事によれば、南アルプストンネルの3つの斜坑の工事の進み具合は、小渋川斜坑が先進坑1600mの約4割、除山斜坑が1870mの7割、釜沢斜坑が350mの4割。伊那山地トンネルの青木川斜坑が600mの5割(『中日』)または完了(『南信州』)。青木工区の進捗状況が2紙で大きく違います。
(補足 2021/04/03) 協議会に出られた方によれば、斜坑部分の掘削は完了していない、約5割の完了という報告だったそうです。『南信州』の記事が間違っています。
除山斜坑
除山斜坑
除山斜坑の掘削日数は2017年11月1日の掘削開始から1238日なので1か月当り約32mのペース(2020年6月下旬で約40m)。
釜沢斜坑
釜沢斜坑
釜沢斜坑は2020年3月3日掘削開始から385日で1か月当り約11m。
青木川斜坑
青木川斜坑
青木川斜坑(伊那山地トンネル)の掘削開始をJR東海が発表したのが2020年7月17日。この日から249日で、600mを完了したとすれば1か月当たり約72m、5割なら約36m。
小渋川斜坑
小渋川斜坑
前回協議会(2020年12月)時点から大きく進んでいないことについて、JR東海は「弱い地質に入り、慎重に工事を進めているため」と話し「掘り進めないと先の地質は分からないが(現状では)想定の範囲内」とした(『中日』)
「地質の変わり目にある」として慎重に掘り進めており、釜沢非常口への到達時期は未定とした。(『南信州』)
小渋川斜坑は、前々回の2020年6月下旬の連絡協議会での報告から数字が変わっていないようです。先進坑の掘削開始は2019年8月23日。3月23日を基準にさかのぼると掘削期間は578日なので、1月当たりの進捗は約25m。2020年6月下旬(23日)時点で約47mだったのでペースがかなり落ちています。
1月18日ころだったか、小渋川斜坑先の先進坑の先にこれまで経験したことのないような規模の地下水があることがわかったので、現場では大変に心配しているという話を聞いたと、大鹿村在住のかたから教えてもらいました(参考ページ)。リニア計画全体について、長野工区でも、極めて赤にちかい黄色信号がともったのかも知れません。なぜかというと、ほとんど直線しか走れないリニアでは、上越新幹線の中山トンネルのような最終手段は採用できないから。「掘って見ないと分からない」には「できない」という場合もあるということ。2020年7月の豪雨で除山と釜沢斜坑は1月18日まで掘削が中断していたので、南アルプストンネルの長野工区は去年の6、7月ころからほとんど進んでいなかったことになります。また、掘削のペースは、最初、約60m程度を見込んでいたようなので、約50%程度に低下しています。つまり10年でトンネル完成の予定は20年となり、このままのペースで工事が進行できたとしても、開業は2039年以降。こんな計画に沿線自治体もわれわれもいつまで付き合うつもりなのでしょうか?