リニア環境評価書の書式の不統一について

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 「リニア環境評価書の書式の不統一について」ということばにについて、変だと思う人は準備書や評価書をよく読まれた方だと思います。ほとんど同じ定型の文章で、地域別、対象別に地名とか場所の名前、異なる部分だけを入れ替えたものというのが多くの人がもつ印象だと思います。でなければ、ページ数だけが自慢のような評価書は1ヶ月という短期間ではできるはずありません。

 そんな評価書なのですが、ほとんどの方が読まない後ろの方、景観への影響評価の部分では、特にフォトモンタージュについて準備書と評価書で大きな違いがあります。いくつかあげてみます。

1. フォトモンタージュの土台になる写真の撮影データが長野県分をのぞいて記載されている点。撮影した日の天候、撮影したカメラの機種名、レンズの焦点距離と35mm判換算の数字、画像処理に使ったソフト名(岐阜県のみ)が書き加えられています。長野県分だけが記載がありません。

2. 撮影データをみると、35mm換算で、34mm、35mm、36mmという焦点距離になるレンズで撮影されたものがほとんどで、愛知県だけが、50mmを使っています。

3. 東京都分と神奈川県分と愛知県分は、評価書、準備書ともに写真のサイズは 2:3 で写真機の撮像センサーの比率と同じです。つまりトリミングなしと推測できます。(補足 2014/05/19:静岡県分の評価書も写真サイズは2:3です。)

4. 岐阜県分はすべてがパノラマ写真です。しかし、水平方向の画角は明示してありません。縦横の比率も場所によりまちまちです。

5.山梨県分では、2:3の画面のものとパノラマが混在しています。パノラマの縦横比は場所によってまちまちです。パノラマの水平方向の画角は明示してありません。

6.長野県分は準備書と評価書で本編に掲載されてる画像の縦横比が変更されています。3:4(1:1.33)だったものが、1:1.43~1.45 程度横長になっています(上下が切られた)。

 以下、これはちょっとおかしいのではないかと思うことを書きます。

なぜ長野県分に撮影データがないのか

 このサイトで以前から書いているように、長野県分のフォトモンタージュの土台となる写真はその多くが35mm判換算28mmレンズで撮影されていました(参考)。長野県の技術評価委員会に対してJR東海は「35mmレンズを使用しました」と報告しています。長野県の指針では28mmでも良いのですが、他の地域をみるといずれも環境省が推薦するハンドブックにしたがって35mm程度のレンズを使用しています。それが大勢なのでしょうが、長野県の指針では28mmでも良いのですから、28mmと書いてよいはずです。しかし撮影データを落としている。評価書の書式の統一を欠いています。

35mm使用でもパノラマ化すれば無意味

 35mmレンズで撮影して四つ切判程度の大きな写真で見せるというのが環境省の推薦するハンドブックの示すところです。頂点の角度が約60度の円錐形が人間の視野に近いと考えてそういっているのです。パノラマにすれば、たとえば、35mmで撮影して、横に2枚をつなげると水平方向の角度は108度にもなります。28mmと35mmでも大違いなのですが、28mmレンズが水平方向の角度は約65度です。構造物の印象が薄くなるのは当たり前です。少なくとも、左右両端間の角度を示すのが常識だろうと思います。このページにパノラマと普通の写真の印象の違いを示しています。(参考:フォトモンタージュのトリックを検証する)

 なお、パノラマ写真の水平方向の画角は、基本的には現地に行って確かめるしかありません。それが一番容易だと思います。測り方は難しいものではありません。

見栄えの良い場所を選んだ

 眺望のきく眺めの良い場所、大きな建物などについては、パノラマ写真は見て楽しいものです。そういう場所をパノラマ写真で見せるというのは悪いことではないと思います。しかし、具体的に今回のアセスについていえば、そういう主要な眺望点では影響が少ない場所もあったという意味でもあるわけです。そういう都合のよい場所があったという意味です。実は、地元の住民からすれば、何も名のある場所だけなくもっと身近な場所でも景色の良い場所があって、そういう場所はJR東海は選択していない。日常の視点場というものについても、関係自治体に問い合わせたとはいっても、結果としてJR東海の基準、観点で選んでいる。市町村の行政当局が住民の感性まで代表しているはずなどありません。

長野県分の写真の出来の悪さが目立つ

 ざっとみると、もちろん私の地元が長野県ということもあろうかとは思いますが、何か他地域にくらべ写真がへたくそに思えます。なにかきれいでない。たとえば、風越山とか虚空蔵山からの写真は雲が多いし、透明度が低く、赤石山脈の眺望場所であるのに、肝心の赤石山脈の稜線が良くわからない。絶景の場所を最善の天候で撮影してフォトモンタージュを作成しようという意識が感じられません。土台となる写真を撮影するため天候を選ぶことはそう難しいことではない。2027年の開業を急ぐだけで、丁寧な仕事をしようという姿勢が見えません。ほかにも、もともとたいした景観じゃないんだから、ちょっとくらい改変したっていいだろう的な場所をあえて選択したと疑いたくなるような雑な感じの写真が目立ちます。

 なにか急いでいるという点は景観以外についても推して知るべし、この評価書に基づいて国土交通大臣は工事の認可について判断するわけです。空恐ろしい話だと思いませんか。

 評価書のフォトモンタージュ写真について全路線について表にまとめました

(2014/05/11)